微生物の農業利用


◆化学肥料と醗酵肥料の養分吸収について

化学肥料の養分吸収過程

①アンモニア態窒素の状態で施用
②土壌中で硝酸態窒素に酸化されて作物に吸収
③作物は、硝酸態窒素を再びアンモニア態窒素に還元して利用
④光合成作用で生産した炭水化物と合成してアミノ酸を作る
⑤アミノ酸の合成で蛋白質を作る以上の窒素同化作用に、多量の糖類を必要とする。
窒素過多の弊害はその為に起こるもので、収量の増大や品質の低下に結びつく。
この窒素同化作用に費やす無駄な多量の糖類を、作物の根や葉、茎の発育に向けることを考える。


発酵肥料の養分吸収過程

アミノ酸態窒素は作物が直接吸収してそのまま利用できるので、窒素同化作用に必要な多量の糖類が不用になる。その分、根や葉、茎の発育に利用できるため、収量の増大や品質の向上が期待できる。

◆連作障害について

同じ畑で同じ作物の栽培を繰り返していると、土が蓄えているミネラルや酵素のバランスが崩れ、作物を正常に育てる地力を失うことになる。特に必須ミネラル (鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウム)の内、マグネシウムが欠乏しやすい。マグネシウムの欠乏は他のミネラルの吸収減少を招くが、中でも亜鉛はマグネシ ウム以上に多くの酵素を活性化させ、免疫機能や生殖細胞の形成に重要な働きをするにもかかわらず、吸収されにくくなる。
化学肥料では酵素や有機酸、ビタミンを生成しないので、微生物相が単純化し、活力が衰え、ミネラルの生成ができなくなる。

●醗 酵 ⇒ 糖類、酵素、ビタミン、アミノ酸、有機酸、成長ホルモン、その他各種生理活性物質が生成される。

①光合成を促進
②病害虫抵抗性を強化
③品質の向上に直接的な効果
④無機養分の可溶化


腐 敗 ⇒アンモニア、各種炭化水素、硫化水素、有害な酵素阻害物質、その他有害還元物質の生成。

①根の活力の低下
②光合成の低下
③種種の生理代謝を乱し、病害を誘発する
④無機養分の難可溶化

◆良質有機物と腐敗性有機物について

良質有機質( 山、里、海、動物性の有機物を組み合わせて使用する。)

①山 ⇒ 落葉、木の実
②里 ⇒ 米糠、籾殻、油粕、大豆粕
③海 ⇒ 海藻、魚粕
④動物性 ⇒ 肉粉、骨粉


腐敗性有機質(下肥、家畜の糞尿、農水産加工場の廃棄物)

家畜の糞尿は、塩や尿酸が多い為、醗酵されにくい。(腐敗性に向く)又、無機化が進んだアンモニアや亜硝酸が多い為、未醗酵の状態で施すと化学肥料と同じく無機栄養吸収となり、硝酸含量の多い不健康な野菜となる。

◆拮抗微生物資材での病気予防について

【拮抗微生物】とは
餌の競合、抗菌物質の産生、寄生などによって病原菌を殺菌したり、抑える働きをする微生物を言う。

 ●抗菌物質など病原菌に活性を示す物質を産生して、病原菌を直接殺菌あるいは生育を抑制する微生物枯草菌、放線菌、シュードモナス、アグロバクテリウム、ペニシリウム。

 ●病原菌に寄生して分解する、微生物トリコデルマ。

 ●難分解性の有機物を分解するのが得意な微生物で、分解の過程で種々の抗菌物質を 産生し病原菌の生育を抑制するなど、間接的に病原菌に働く微生物乳酸菌、酵母、アス ペルギルス、リゾープス。

 ●植物と共生状態にある微生物菌根菌(グロムスなど)や組織内共生微生物(キサントモナスなど)。

●土壌中は、ある種の微生物だけが優先して増殖しないように互いに影響あるいは拮抗しあう状態にある。このため、ある種の微生物が増加すると、それを修復するような働きが生じてくる。

●土壌消毒後、消毒済みの効果がなくなると、1週間もすると消毒前の微生物の数に戻ってしまう。同じ種類の微生物が同じように密度を回復するのでなく、病原菌以外の生育の速い微生物を中心に数が回復する。したがって、病原菌が回復する前に、拮抗微生物を速く多く回復させる。

●発生している病害を明らかにして、拮抗微生物資材を用いる。病原菌には、細胞膜がキチン質でできているものとセルロース質でできているものの2種類がある。

 ●キチン質 ⇒ フザリウム菌、トリコデルマ菌

 ●セルロース質 ⇒ 疫病菌(フイトフラ)、苗立枯病(ピシウム)土壌中の糸状菌(フザリウムとフイトフラで、割合が決まっている)フザリウムが減るとフイトフラが増える。したがって、先ず病原菌を見極め、病原菌によって餌を変える。

 

◆拮抗微生物の施用について

微生物は夜働くので、夜間または雨天時の散布がベスト。

菌は集団行動をとるので、均一散布より塊散布を行う。

 発酵肥料の絶対量が多い場合は別として、少量ならば全面よりも溝、溝よりは植え穴がベスト。追肥の場合も、点肥が良い。菌糸や胞子体の形成ができるように施す必要が有る。

餌と棲み家をいっしょに投入する。

拮抗微生物を土に投入すると、土着微生物との間で餌と棲み家をめぐっていろいろな競合が生じる。この場合、外から入ってきた拮抗微生物には棲み家と餌がな いため、力を発揮することなく土着微生物との競争に負けてしまう。したがって、土着微生物には利用されにくいが拮抗微生物には利用される餌と、土着微生物 には棲みにくく栄養源にもならない棲み家を、拮抗微生物といっしょに投入する。

◆拮抗微生物に良い餌と棲み家

土着微生物に利用されにくい難分解性の材料が良い。

 ・セルロース ⇒ トウモロコシ穂軸、稲わら、米糠、肉粉、骨粉(枯草菌が増える)

 ・キチン⇒ カニガラ(放線菌が増える)


棲み家

土着微生物は棲みにくく、栄養源とならない。

 ・炭

 ・パーライト

 ・コーラル(珊瑚の化石)

  生の材料は、土壌表面に散布するか、浅く耕運する。
  餌のない土壌では、微生物資材を投入する前に施用する。

  【拮抗微生物の投入量】

  10アール当り200kg~300kgが良い。

苗作五割とは

苗床には、土壌病害を起こすような病原性は棲息していないか、あるいは低密度である。又、微生物相も単純な場合が多く、拮抗微生物も他の土着微生物との競争が少なく、根圏に定着しやすい条件となる。
作物が病原菌に感染しやすいのは、定植直後で作物が根づいていない時期に多い傾向がある。このため苗床での使用は、拮抗微生物という土産を持たせ、作物が 一人前になって抵抗力が備わるまで作物を守ってやれる効果的な方法であり、苗床で作られた根圏微生物とは一生の付き合いにもなる。これが苗作五割と言われ る理由。

◆ユーキタン施用の効用

水稲の場合

・苗の細根の発生が多くなり、立ち枯れ病やその他病害の発生を未然に防ぐ
(植物生理活性物質の効用)

・田植え後の葉先の枯れ込みがなく、活着が早まる

(吸収される窒素の違い、アミノ酸態とアンモニア態、硝酸態の違い)

化学肥料、アンモニア態窒素を吸収した場合、稲の葉の表面は凹凸の起伏が激しくなる。その為、太陽光線が当たると光の乱反射が起こり光の屈折が強くなるた めに、同じ量の肥料成分を施しても葉色が青黒く見える。ところが、ユーキタンを施した場合は、アミノ酸態の形態での窒素吸収が増えるために葉の表面の凹凸 は小さくなり、光の乱反射は少なく、色は淡く見える。

・生育初期の無駄な分けつが少ない
葉色はやや淡く、葉幅はやや狭い。剣葉で直立しシダレ葉にならない為、最高分けつ期を過ぎても畝の向こうを見渡すことができる。そのため通風採光が良く、有効茎歩合は高い。

・出穂後、節間が短くなる

・茎葉が短く、耐病性がついて倒状がない。(10アール10俵の収穫)

・出穂後に、葉色が濃くなってくる
葉色が濃いため熟期が遅れそうだが、実際には1週間ほど早まる。

・精米しても飴色で食味が良い

野菜の場合

・根の発達が極めて早い。
キュウリやトマトはその差が顕著に現れる。一般には細根が少ない太い根のものが多いが、ユーキタンを使うと、細かくて白く艶のある根がふえる。

・節間が詰まり、小型で肉厚の葉。

・葉色が淡く鮮明となり、乱形果の発生が減る。
化学肥料を施したとき特有の乱形果の発生は少なくなる。トマトのように、栄養成長と生殖成長が交互に来る果菜類の場合には、その変化が顕著に現れる。

・微量要素欠乏や生理障害の発生が少ない。キレート効果によって微量要素の吸収がスムーズになっているのではないか。

・果菜類では果梗が太くなり、着果が良くなる。

・収穫物の光沢が良くなり糖度向上。
キュウリの場合はややトゲが硬くなる傾向、甘さを重視する野菜は糖度が高まる。葉菜類では、日持ちが良くなる。

・耐病性が強まる。

・作物体内の代謝を活発にする。

 ◆植物ホルモンの効果

 植物活性酵素によって代謝がスムーズにすすむため、果実や種子への養分の集積を促  進する。

 

花木の場合

・葉が上向きで活力があり緑色が鮮明になるため、観賞植物としての価値が高まる。

・その花の特性が素直に現れ、花色の鮮やかさが違う。

・花の延命作用が働く。

・発酵肥料の有機リン酸は吸収されやすいため、冬越しの低温によるリン酸肥料の溶けにくさが解消される。キクなど、低温の場合には、硝酸からアミノ酸まで変 化させる過程がうまくいかず、その中間のアマイドの形態で止まってしまうことがある。アマイドの形態の窒素は病原菌が好む窒素であるため、作物の耐病性が 低下しやすくなってしまう。
発酵肥料の場合は、最初からアミノ酸態で吸収されるため、天候が不順であっても病気にかかりにくい体質になる。

◆土壌管理のポイント


・土壌中に微生物を培養させる作業を行う⇒ 餌と種と家と水 を与える

 ・餌 ⇒ 微生物を増殖させる為に餌を施す(米糠)

 ・種 ⇒ 微生物を施す(ユーキタン、善玉そば殻堆肥、善玉菌の素)

 ・家 ⇒ 土壌中に有用微生物が棲みつくスペースを造る。(天然木質炭素)

 ・水 ⇒ 水を地中まで浸透するように十分にやる。(味自慢の素希釈潅水)


上記方法で、菌の密度がかなり高まった時点(発酵合成型土壌)で、良質有機質(米糠、油粕)を施用すると、腐敗型土壌での未熟有機物の分解過程で生じる有 害な作用はなく、施用された有機物の大部分は可溶化されるようになります。そのため吸収される窒素はアミノ酸などのように有機体となっている場合が多く、 タンパク合成のプロセス(窒素⇒アミノ酸⇒蛋白質・この過程で糖類が消費される)で糖類の消耗は少なく、結果的に糖類の蓄積量が増大し、高品質で多収とい う効果が現れてきます。又、微生物の繁殖分解活動によって、各種成長ホルモン、アミノ酸、酵素をはじめ、種々の生理活性物質をつくりだします。